医学AI特論Ⅰ

第1回基礎数学1

機械学習においては勾配法を用いて最適化を求めます。具体例を用いて説明します。鶴x匹と亀y匹で合計30匹あります。鶴の足の数の合計(2本*x)と亀の足の数の合計(4本*y)の総合計は100本です。亀は何匹でしょうか?

 

鶴と亀の数を求める方法は3つあります。連立方程式、行列、そして勾配法による回答です。行列による方法では逆行列を使用します。これが最も高度な方法です。しかし機械学習においては勾配法を使用します。これはまず適当な数値を使用し誤差を求め、少しずつ数値を変えて誤差を最小にする方法です。最小値は誤差を2乗すると求めやすくなります。

 

人工知能においては、入力値、パラメータによる予想出力値と真実の値の誤差を計算し、パラメータを少しずつ変化させることにより、この誤差が最小になるようなパラメータを求めます。入力値、パラメータ、出力値、そして真実の値はベクトル又はベクトルの集合である行列の形式に収めることで効率よく表示されます。

 

コンピューターにおける計算の理論は簡潔ですが、大量の計算量を高速に行うことで、結果的に人間よりも高度な計算を行うことができるのです。

 

第2回基礎数学2

機械学習においては多変数の微分(偏微分)が使用されます。誤差の最小値を求めるためには、その関数の傾きが0になる場所を見つける必要があるからです。更に勾配法を使用する際に数列が重要となります。数列は漸化式或いは一般項で表現されます。機械学習においては変数が複数存在し、複数の数列が互いに関連しているので連立漸化式が使用されます。この連立漸化式を偏微分することにより最終的に誤差の最小値を計算することになります。人工知能の各層の構造は連立漸化式を行列の形にすることによって表現されます。

 

微分においては、はある点における傾きとある点からの変化を近似式という方法で求めます。人工知能においては複数の層が存在し、入力変数と出力変数の関係はその分だけ合成関数となります。よってチェーンルールにより、複数の変数を使用し、複数の微分式に分割し微分することになります。

 

人工知能においては、勾配法から数列、多変数から偏微分、そして複数の中間層からチェーンルールの応用が必須となるのです。

第8回Elastic Net

この講義では訓練データを用いて機械学習モデルを作成し、テストデータを使用してこのモデルの正確性を評価する手法を学習しました。

 

ここではインプット変数データとアウトプット変数データをそれぞれ訓練データとテストデータにランダムに分割致しました。前者が80%、後者が20%です。次に、インプット変数を10度のPolynomialにそれぞれ変換し、訓練データを用いてLinear Regressionのモデルを作成致しました。その後、そのモデルを用いてテストデータのインプット変数からアウトプット変数の予測値を作成しました。

 

作図ではテストデータにおける実際の変数の関係を青色の点、インプット変数と予想されたアウトプット変数の予測値の関係を赤色の線でそれぞれ図示しました。

 

最後にテストデータにおける平均二乗誤差を計算し、モデルの正確性を求めました。結果は82%です。

 

 


医学AI特論Ⅱ

第6回敵対的生成ネットワーク(GANs)

敵対的生成ネットワーク(GANsとは生成モデルと識別モデルから構成され、合成画像などの合成データを作成する機械学習手法を用いた人工知能(AI)モデルです。生成モデルは実際のデータxから入力乱数zを使用して類似のデータを生成します。識別モデルは実際のデータxと合成データGz)を識別します。この過程を繰り返すと双方のモデルが能力を高め合い、実際のデータと判別が困難な自然な合成データを生成することになります。

 

このGANsは医療画像にも利用され始めています。例えば、シミ等の色素班は紫外線の暴露や加齢により生じ、日光角化症や有棘細胞癌を引き起こします。メラニン細胞が紫外線を吸収する性質を利用し、紫外線写真撮影によって色素班を定量的に測定することが可能ですが、日常的な撮影は困難です。そこでGANsのモデルが通常のカラー写真から紫外線写真を合成することを学習し、通常のカラー写真から色素班を検出することに利用されます。

第9回自然言語処理(NLP)

現在、人工知能(AI)による自然言語処理は医療健康分野を含めて様々な分野に利用されています。自然言語処理の代表例である機械翻訳や文章理解についても深層学習により急速に精度が向上しました。現在では、単語の特徴をベクトルに変化し、数学モデルによって単語の意味を解析します。多様なAIモデルも開発されました。AIモデルの訓練方法も、Pre-trainFine-tuningの組み合わせが確立しています。AIの自然言語処理能力が人間の能力を超えたという報告もあります。

 

但し、AIはまだ言語を深く理解することや、知識と推論を組み合わせる作業を苦手としています。これからの自然言語処理の発展のために、従来の記号推論と最新技術の深層学習を融合することが考案されています。言語で書かれた知識を柔らかく推論に使用できることが目標です。将来的にはAIがライティングの訂正や添削、記述答案の評価、論述の対話的指導等も行えるようになれることが期待されています。

第12回AIと社会

現在、人工知能(AI)の開発が急速に進歩し、様々な日常生活や産業に取り入れられています。近い将来AIの知的能力は人間の知的能力を超えるのではないかと予想されています。一般の人々の間でもAIの存在が認知され、AIに対する期待と共に不安が広まっています。AIは特に医療分野、自動運転、コミュニケーション、事務作業や家事全般の代行、エネルギー開発等における今後の活躍が期待されています。

 

他方で多くの一般人は、AIのシステムエラーによる事故や社会混乱、人類を超えた知能による制御不能や、AIによる人類に対する攻撃、人間の失業化、人権侵害等の危険性について不安を感じています。科学的に正しいことが常に社会に受け入れられるとは限りません。このことはAIついても当てはまります。どんな素晴らしいAIが開発されようとも、そのAIが一般社会に受け入れられるように導入することが大切です。そのためにはそれぞれの地域の文化を理解することが重要です。